


「地域と農への恩返し」広岡史郎/span>
広岡さんは地域のリーダーとして、活躍しておられます。今回、広岡農場を初めて訪問したのですが、お話のほか農場を詳しく案内して頂き、ひとつひとつ懇切丁寧に、わかりやすくご説明下さいました。こちらが恐縮してしまうほど、心を尽くして下さって、広岡さんが地域で慕われるリーダーである理由がわかったような気がして、帰ってきました。おみやげの産みたて卵と一緒に。
【平飼いへの転向】
菊地:広岡農場さんは、平飼い卵が主な生産物ですね。広岡さんが、この農場を継がれることになったのは、いつ頃からですか?
広岡:僕は機械工学の学校を卒業して、会社勤めをしてたんやけどね、30歳のときに退職して農業を継ぐことにして。今年で31年目を迎えるかな。僕が帰ってきたときは、5000羽ほどのゲージ養鶏をしていたんやけど、餌や鶏舎を徐々に改良していってね、平飼いに変えていったわけです。
菊地:平飼いに変えていったのは、どうしてでしょう?
広岡:農業するようになってから、当時 兵庫県有機農業研究会の代表だった渡辺正吾さんと知り合ってね。渡辺さんの話しを聞いているうち、その考えに共感することが多くてね、影響を受けることも多かったんです。そうしたことがきっかけになって、これからの農業のあるべき姿がイメージができたり、農業仲間が広がっていく可能性を感じたり。消費者との交流も始まっていった、そんな時代があったんです。
"同じ志"いうんかな、それを共有できる仲間ができるにつれて、ネットワークが広がっていってね。PHD協会(海外から有機農業の研修生を招く活動など実施)との関わりができたのもこの頃で。そんなつながりがあって、農業について学んでいくうち、ゲージ養鶏から平飼いへ、移行を始めたわけです。
菊地:まずは、そういう背景があった、と。
広岡:そやね。それでね、平飼い卵のほうがお客さんに喜んでもらえるような卵がつくれること、それに値段設定が有利になるので経営が安定するやろ、とも思った。それに加えて、生産的な効率も平飼いのほうがええん違うか、と感じたことも大きな理由ですね。ゲージ養鶏の場合はね、糞掃除がとても大変なん。何十万羽いう巨大な施設やったら、オートメーション化されて楽やろけど、そうでない人力の場合は、ハエは湧くし、夏など暑い場合は床がドロドロになるし、それは難儀なもんですわ。そういった複合的な理由から、時間をかけて序々に平飼いにスイッチしていったんです。完全に移行するまで、5年くらいかかったかな。
【卵づくり】
菊地:広岡農場では、ずっと養鶏をやっていたんですか?
広岡:戦前までは養蚕を営んでいたらしいけど、鶏は祖父の代からやね。
菊地:現在、どのくらいの規模でやってらっしゃいます?
広岡:鶏は常時1200~1600羽を飼っていて、卵は一日約1000個は採れるかな。広岡農場の特徴としては、鶏に与える餌、これに対するこだわりがひとつあるかな。
菊地:そのあたりについて、詳しく教えて下さい。
広岡:大メーカーの平飼いは、配合飼料を使って、ただ地面で飼ってるだけ、ということが、まあよくある話なんやけどね。うちでは、餌はできるだけ安全なものを使用するよう、心がけてますね。餌のメインとなるものはトウモロコシ。PHFコーンを使ってます。これに地元の米ぬかを自家配合する。で、これを納豆菌で発酵させる…この発酵は毎日欠かさずやってて、出来たてのものを鶏に与えてますね。
菊地:発酵させると、いい餌になるんですか?
広岡:そうやね、鶏の身体にやさしくて、鶏の健康のために、大事なんよ。人間でも、味噌や納豆やヨーグルトは、身体によい健康食、とされているでしょ。それに、この餌はサルモネラ対策にもなるので、一石二鳥なわけです。餌にはその他、にんにくをすり潰して与えることもあるけどね。すると、鶏は元気で病気をしにくくなる。そのせいもあって、鶏に薬を使うことは、ないですね。餌の配合は、季節によって微妙に変えてやるようにしていますね。カロリーとたんぱく質を考慮してね。
菊地:なるほど、鶏にもにんにくは効くんですね。
広岡:効くねえ。ちなみに、にんにくは自家製です。ひと昔前まで、他の農場では、中国の粉末にんにくを使用していた、いうのを聞いたことがあるけれど、中国のにんにくは危ない、いう話が伝わって、現在ではどこの農場も使っていないと思うよ。うちは、にんにくを作り続けてるけれど、にんにくづくりというのは非効率なところがあるんです。にんにくの一塊を植えつけても6倍くらいしか増えない。でも鶏に対する効果を考えると、作り続けないわけにいかへんね。
菊地:病気の予防には必要だ、と。その他に、何か対策はあります?
広岡:健康管理のため、寒さとか暑さとか、こまめな温度管理やね。それから、床部の糞の乾燥状態のチェック ― 床が湿っていたら、菌が繁殖して病気になりやすいんよ。その2点をしっかりと気をつけていれば、うちの場合、病気になることはまず、ないです。病気対策はバッチリ、いうところかな。これは余談やけど、たまに、キツネが網を破って侵入する、いう被害があるね。連中も暇なんか、毎日毎日やってきては、同じ場所をしつこく引っ掻くらしくてね、網を破られると、一晩で20匹ほどがやられることがあるんよ。滅多にないことやけどね。
【「良い卵」】
菊地:広岡農場の卵って、どんな卵なんですか?範囲の広い質問になってしまいますが。
広岡:"良い卵"を目指してやってますよ。良い卵を産ますんは、なかなか簡単やないけどね。良い卵とつくるためにできることは、愛情もって仕事をすることかな。お客さんの顔を思い浮かべて取り組むと、色んなことに気が回って新しいアイディアなんかも生まれるし、仕事がより丁寧になるし、僕自身も楽しいからね。
菊地:良い卵というのは、どんなです?
広岡:卵の殻がしっかりしていて、大きくて、割ると色合いがキレイなもの、といったところかな。味が良いのは、もちろんのことね。味については、うちでは一定のレベル以上のものを、コンスタントにつくれてるよ。若い鶏はしっかりした、殻の厚いしっかりした卵を産んでくれる傾向にあるけど、平均的に小さいものが多い。年齢を重ねた鶏は逆で、殻が薄いけど、大きいものが多いわね。
菊地:"卵の色"についてですが、巷では濃い黄色の・赤っぽいような黄身が、おいしそう、というか人気があるでしょう?そこんとこ、ひと言、モノ申して頂けますか(笑)
広岡:僕なんかはあれ、気持ち悪いですよ。黄身の黄色は、餌の要素によるところが、大きいんやけどね。ああいう濃い黄色のは"卵黄着色剤"を使用しているでしょう。昔は化学合成のものが使われていたり、今は中国産の赤唐辛子を粉にしたやつ、それが使われている。そんなんおそらく、農薬漬けに違いないわね。うちはそういうものは一切、使っていないから、自然な卵の色になるだけで。まあ、うちの卵を買ってくれる人は、色の濃い・赤い卵なんて気持ち悪い、という意識の人が多いですけど。そうでない一般の人びとは、まだなかなかわかっておられないから。うちの卵を朝市なんかで売ったら、たまに苦情をもらうこともありますよ。「こんな薄い色の卵なんて!」とかおっしゃってね。健康ブームとかグルメブームとかあってもね、そのあたりはなかなか。すべての人がわかってくれたら、うちの卵がもっとたくさん売れて、高うで売れるんやけどね(笑)
菊地:お客さんの話が出ましたが、いま取引なさっている相手先は、どんなところでしょう?
広岡:個人のお客さん、それから、消費者グループのお客さん、ですね。直接やり取りしてます。時代の流れなのか、グループの方は減って、個人のお客さんが増える傾向にあるね。だから、卵の出荷数は増えていないのに、宅配の件数は増えて。 その他の取引としては、JA兵庫西のファーマーズマーケットに出荷することもあるかな。
【「僕が役に立てること」】
菊地:広岡さんは、農家としてだけでなく、色んな顔を持っておられますよね。ご活躍のようですが。
広岡:どうやろね。僕が役に立てると思ったことには、精力的に取り組むようにしてるんやけどね。地域と農業への恩返し、とでも言うんかな。仕事がおろそかにならない限りでやけどね。
菊地:具体的にどういう活動か、教えて下さい。
広岡:町会議員としての活動。国会議員の地元後援会の責任者としての活動。"市川流域アメニティ研究会""兵庫の川サミット連絡会"の設立と活動。NPO活動には、積極的に取り組んでますね。
菊地:広岡さんのご活動のなかで、特に重要なテーマって何でしょう?
広岡:僕は特に食育について、大事なことやと考えてます。具体的なことを言えば、地元の給食センターに地元産の作物を使ってもらうよう、有機農業についての取組みを進めてますね。農協とかでは、指導してくれませんから。農協にしたら農薬降れ降れ、でしょ。自分らでやるしかない。志望者を募って、講習会を開催したり、土壌分析の手法を学んだり。志望者共同で種を淡路から購入して、生産を進めてますわ。まずは玉ねぎからはじめてるんやけど、今後は他の品目も増やしていきたい。そうやって、食育に関する取組みを、少しずつやってる最中です。
菊地:広岡さんの場合、堆肥はふんだんにありますし。
広岡:そうやね。うちの鶏糞は、無料で提供してます。鶏の糞は、素晴らしい肥料になるからね。糞にもみがらを入れて混ぜて、これを発酵させると、上質な良い肥料になるよ。それに、うちでは兎も飼ってるから。兎の糞も肥料として優れていて、特に虫に対する忌避剤になるんやね。ちなみに、野菜のため以外にも、利用しているよ。鶏糞や兎糞を使って、にんにくや牧草をつくって、それを鶏にやると。そして出た糞をまた肥料に、と。そんなふうに、有機栽培と畜産を組み合わせたやり方を、僕は有畜循環農法と呼んでるねんけどね。
菊地:新規就農の方も、増えたらいいですね。
広岡:うん、今後は 農家の後継者をつくっていきたい、と思ってますね。若い人たちにも興味を持ってもらいたいし、それにそろそろ、定年になった僕の同級生が故郷に帰って来る頃やから。農業は健康に対する意識が高まるし、実際に体を動かすことができるでしょ。僕のスタイルの農業なら、工夫して自由な時間を持つこともできるから、自分のペースで取り組める。それに、有機農業やったら、色んな人と知り合って、色んな楽しみが生まれていくから。
菊地:ご面倒見の良い広岡さんでいらっしゃるから、これからどんどん人が増えていくと思いますよ。
3つの質問
「もし農業をしていなかったら?」
僕は農業の前はエンジニアやったからね。そのまま機械関係の会社勤めを続けていると思いますね。
それと、現在やっている議員活動を含めた地域発展のための活動、かな。
「休日の過ごし方」
こういう仕事やから、丸一日が休日、というのはないけどね。
空いた時間はボランティア活動を含めた地域活動が専らですね。
「10年後の自分はどうなっていますか」
農業を志す若い人たちへの指導とかアドバイスとか、今まで以上にやっていきたいね。
農業の発展に役立ちたいと思ってます。
…有機農業が盛んになっていってほしいね。
僕の住む福崎は、全体的な有機農業への取組みがまだまだですから。
でも、これから農業しようという人は、福崎は入りやすいと思うよ。
生活するのに不便なほど田舎ではないし、神戸まで1時間、姫路まで30分もあれば着くから。
福崎にはそういう地の利もあるんで、新規でも農業にも取り組みやすい環境ですよ。











